野村恵子写真展「龍宮」
沖縄の島々では、海の向こう、水平線の彼方に「ニライカナイ」と呼ばれる理想郷があると信じられてきました。そこは、生と死の向こう側にある極楽浄土として語り継がれてきました。
「龍宮」もまた、海の底、あるいはその彼方にある異界として、人々の想像力の中に息づいてきました。その世界は遠い神話ではありません。今もこの島の風や波、人々の祈りの中に、静かに息づいているように思えます。
私は神戸に生まれ育ち、その後は東京を拠点に活動してきました。そして2020年、沖縄へ移り住みました。いまは浜辺の近くで暮らしながら、潮の満ち引きや光の移ろいを感じ、日々写真を撮り続けています。
これまでも私の作品には、「水の循環」というテーマが奥底に流れていました。しかし沖縄で暮らすようになってからは、その循環が単なる自然現象ではないことを、より強く感じるようになりました。それは人の営みや祈り、そして命そのものへとつながっている——そのことを、この島は確かに教えてくれます。
水は巡り、自然は巡り、人の命もまた巡っていく。
海に抱かれた沖縄と、大雪山の清らかな水に育まれた東川。風景はまったく異なります。それでも、人は水とともに生き、その循環の中で季節を重ね、命をつないできました。私が沖縄で見続けてきた海も、この東川を流れる水脈も、どこかで確かにつながっている。そう感じています。
本展では、1999年に発表した、私にとって初めて沖縄を撮影したシリーズ『DEEP SOUTH』と、現在へと続く『龍宮』をあわせて展示します。『DEEP SOUTH』は当時のままのプリントであり、2000年に東川町にコレクションされた作品です。
1999年から2026年、27年という歳月を隔てながら沖縄を見つめ続けるなかで、私の眼差しは、目に見える風景から、その奥に流れる記憶や祈りへと少しずつ向かっていきました。この二つのシリーズを通して、その時間の流れを感じていただければ幸いです。
空と海の彼方、ニライカナイへと続く光を、私はこれからも写真の中で探し続けていきます。
―2026年 野村恵子
【会期】2026年9月18日(金)〜10月4日(日)
【会場】東川町文化ギャラリー
〒071-1423北海道上川郡東川町東町1-19-8 TEL : 0166-82-4700
https://higashikawa-town.jp/bunkagallery
【開館時間】10:00~17:00
【入館料】100円(中学生以下無料)
【主催】写真の町東川町
【イベント】
●トークイベント
作品についてのお話や、関連エピソードなどを野村恵子さんと、キュレーターの柿島貴志さんに語っていただきます。
日時:9月19日(土)13:30~
会場:東川町文化ギャラリー
ゲスト:柿島貴志(POETIC SCAPE代表)
※事前申込不要。入館料のみでお楽しみいただけます。
●ポートフォリオレビュー
野村恵子さんによるポートフォリオレビューを開催。
1対1で作品に対するアドバイスを伺うことができます。
ぜひご参加ください。
日時:9月20日(日)・21日(月・祝)
①10:30~ / ②11:00~/ ③13:30~/ ④14:00~
※各回15分
会場:東川町文化ギャラリー
※ご自身の作品をご持参ください。
※入館料のみでご参加いただけます。
※要予約(下記QRコード または コチラ よりお申し込みください)


野村恵子
NOMURA Keiko
神戸市生まれ。
同志社女子大学英米文学部中退、大阪写真専門学校(現・大阪ビジュアルアーツアカデミー)卒業。卒業後、渡米。ロサンゼルス、サンタフェにてワークショップなどに参加し、写真を学ぶ。帰国後、ベトナムをテーマにした初の個展により、1997年「コニカプラザ 新しい写真家登場」年間グランプリを受賞。
1999年、沖縄をテーマにした写真集『DEEP SOUTH』を発表。同名の写真展を渋谷パルコギャラリーにて開催。同作品により日本写真協会新人賞を受賞、2000年には東川賞新人作家賞を受賞する。人物や風景から滲み出す濃密で切ない空気感、そして独特の色彩感覚から力強く紡ぎ出された作品は高く評価されている。
2019年、写真集『Otari – Pristine Peaks 山霊の庭』により林忠彦写真賞を受賞。個展開催数は50回を超え、国内外のグループ展にも多数参加。
2022年、ポーランドより写真集『Melody of Light』、2026年にはリスボンより『Dragon Blue』を刊行。そのほか写真集多数。
現在、沖縄を拠点に活動中。2023年より、非営利の写真教育団体「New Photographers Okinawa」および、沖縄発のインディーズプレス「Thomas Press」代表。
www.keikonomura.com
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