この作品は、祖父が家の中で散髪をしてもらっている様子を撮影したものです。私の祖父は数年前に屋根から転落したことにより体が麻痺してしまい、今も車イスの生活を送っています。そのため、普段はデイサービスで散髪をしてもらっているのですが、この日は美容学校に通っている私の姉の練習のために家で散髪をしていました。今回は、普段のような自然体でいる姿が撮れるよう工夫しました。

初見は床屋で撮影した作品のように見えましたが、これは自宅でのワンシーンなのですね。その事実に気づいた瞬間、１枚目の車椅子が全てを語り始めます。応募票を読むまでもなく、きっとこの男性にとって重大なことが起こったのだということがわかるのです。辛く悲しい出来事だったはずですが、３枚目の鏡越しに見える男性の目には力強さが見えます。前を向いて生きるという強い意志のようなものが感じられることで、この男性の人生の続きが見えるようです。（中西）