大村麻衣子さん(東川町出身)
塚越さちさん(東川町出身)
移住して8年
自分自身と暮らしを大事にした
生活ができるようになりました

育った東川に戻り、洋服のお直しと雑貨のお店を開業。暮らしの中で生まれる手仕事が喜びの循環につながれば、と話します。仕事中心の生活だった東京時代とは働き方も変え、自然を感じてホッとできる時間を大事にしながら自分自身と日々の暮らしを大切に過ごしています。

両親が理想の暮らしを求めて
たどりついた場所、東川

洋服のお直しを受け付ける「pavan-ti(パバンティ)」のカウンターの天板は、元は店主、大村麻衣子さんの母、洋子さんが愛用していた裁ち台です。一家は暮らす場所を探して関東から北海道に移住し、麻衣子さんが小学3年生の時にここ、東川に落ち着くことにしたそう。町の中心部から約9キロの山の中の住まいで洋子さんは染物をし、洋服を作っていました。その影響を受け、小学生の頃から裁縫が好きだったという麻衣子さん。高校卒業後は東京でデザインを学び、服飾メーカーのデザイナーとして働きはじめます。流行を先読みしながらトレンドを生み出すのは貴重な経験でしたが、生活は昼夜逆転。食生活も乱れ、一時期体を壊してしまったそう。大好きなファッションの仕事を続けるため転職し、もともと興味のあったリメイクやお直しの世界に入りました。2008年には「pavan-ti」を立ち上げ、アジア各国で集めた材料や古着をリメイクした洋服の販売を開始。そんな中で起きたのが東日本大震災です。改めて、日々の暮らしを大事に生きていける場所について考えた時に「自然を感じながらものづくりがしたい」という気持ちが強くなり、北海道への帰郷を決めました。

妹の力を借り、
東川のメインストリートで開業

旭川市の雑貨店の一画でお直し工房を間借りしていたところ、知人から東川の店舗が空くからそこで営業しないかと声をかけられます。ただ、「お店を持つ」というのは、当時の麻衣子さんにとってとてもハードルの高いことでした。そこで、当時関東に住んでいた妹の塚越さちさんに相談。同時期にさちさんも一家で故郷に移り住むことを考えており、お店は姉妹で運営することになりました。それから約8年。麻衣子さんはお直しと洋服のリメイクデザイン、さちさんはオリジナルアクセサリー雑貨の制作や紙媒体、WEBのデザイン編集などを担当しています。姉妹2人で他愛もないことを話しながら手を動かす日々。お店の窓から赤く染まる空が見える夕焼けの時間が好きだと話します。「東京で仕事をしていた時は、求められたことに応えることを優先していました。東川で働くようになってからは自分を大切にする時間を作るようになりました。パートナーとの時間や暮らしを楽しむことにも意識を置くことで、より自分らしい働き方ができ、無理をしすぎないで生きることにつながっています」。


自分の持つ技術で
小さな喜びを手から手へ

お直しを受け付ける際、そのアイテムに関する物語を聞くことも大切にしているそう。理由は「こうしたらより良くなるかも?」という提案ができるから。お店の名前、「pavan-ti」はネイティブ・アメリカン、ホピ族の言葉で「より良くなる」の意味です。「持って来ていただくものと対話するように向き合い、要望どおりにお直しをし、その品がお客様の元に戻っていくことに喜びを感じます」という麻衣子さん。喜びは、麻衣子さんの技術で、お気に入りの品が「より良く」なったお客様にも生まれるはず。かつて東川の山の中にあった家で始まった布との付き合いは、再び暮らしはじめた東川で、喜びが循環するものづくりへと展開しています。