自然豊かな環境を求め
妻の「人生の宝物」の地、東川へ
東川町の市街地から車で20分ほどの山の中で18歳まで暮らした塚越さちさん。当時の生活を「人生の宝物」と表現します。その後東京で職を得て、結婚。東日本大震災の影響もあり、「この先どこで暮らすか」を考えながら関東で子育てをしていました。「東川の、あの自然のある場所へ」という思いはありましたが、夫の仕事のことなどを考えると現実的ではなく、言い出せなかったと振り返ります。一方、夫の大輔さんはベランダでハーブや野菜を育てるさちさんを見て「もっと広い所で土に触れる生活がしたいだろうなぁ」と感じていました。自身は山好きで、「2人とも自然が多いところのほうが生き生きと暮らせるのではないか」と思っていたそう。そんな中、さちさんのお姉さんが洋服のお直しと雑貨のお店「pavan-ti」を東川で始めることに。さちさんがお店の立ち上げから手伝うことになり、大輔さんの仕事も見つかったことから2015年に一家で東川に移り住みました。
当たり前でないことを
「当たり前にしていい」という驚き
さちさんにとってはUターン移住ですが、かつて暮らした家も今はなく、「親が用意してくれた環境の中で生活していた子ども時代と違い、人間関係を自分で作っていく必要がありました」。それでも、日々商店街の人たちとのお付き合いなどを重ねていくと「町が大好きで、どういう町にしていきたいかを考えている方が多く、それが励みにもなりました」と言います。4年前にはマイホームも手に入れましたが、その際にこだわったのは窓から大雪山系の山々を眺められるようにすること。大輔さんは、今もその景色に毎朝「うわっ、すげえ!」と感動していると笑います。「ここは水もお米も野菜もおいしくて自然もいっぱい。その中で仕事があって家族が支え合う…当たり前のようで当たり前でなくて、でもそれを当たり前にしていいんだって。東川で暮らすようになって、今いる場所に感動しながら生きていいんだ、と思えるようになりました」。
これまでの経験を生かして
地元の人々と関わりながら働きたい
移住から約8年。「地元の人たちと関わりながら働きたい」というのが夫婦に芽生え始めた共通の想いです。大輔さんは2022年から旭岳のビジターセンターに勤務。今後はアウトドアガイドになり東川の自然と密接に関わっていきたいと考えています。「ガイドさんは皆さん個性豊か。僕はこれまでに、絵と本と音楽に関わる仕事に携わってきました。そういった文化的なものや東京での経験も生かして町の魅力を発信していけたら」。さちさんはお店では当初、経理からアクセサリー作りまで担当する自称「雑用なんでも屋」からスタート。現在は、東京でのグラフィックデザインや書籍編集の経験を生かして、商店街のポップやチラシ作り、WEB制作のお仕事も受けるようになっています。今後も自分たちらしく町での暮らしを楽しみながら様々な人と関わり、その求めに応じて自身のスキルも磨いていきたいと話します。