東川らしさ
#01 適疎なまちづくり
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ほど良いゆとり
適疎(てきそ)――普段あまり聞き慣れない言葉だと思います。この言葉自体は、1969年の『過疎社会』(米山俊直、日本放送出版協会)の中に見られるように、日本で過疎や過密が論じられ始めた頃から存在していました。
その「適疎」という言葉を、過密でもなく過疎でもない、「適当に『疎』(ゆとり)がある」ことと解釈し、町では2007年頃から、まちづくりの理想像を示す言葉として使ってきました。私たちにとって「適疎」とは、仲間と時間と空間の3つの「間」があり、人々の暮らしに「ほど良いゆとり」がある暮らすことなのです。
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自分らしく暮らせるように
暮らしが豊かでなければ、人は町に住み続けられません。町の人々が幸せな暮らしを送っていなければ、観光や仕事、移住のために訪れようとするみなさんに町を選んでもらえません。だから私たちは、「適疎なまちづくり」を通して、まずは住民同士お互いに顔が見え、小さい子どもたちまでが日常的に挨拶を交わし、町なかで会話が弾み、あちらこちらに笑顔が溢れ、それぞれが自分らしく豊かに暮らすことのできる町を目指してきました。
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暮らしの土壌を育む
東川町でいま、「適疎」という言葉が共通の価値観として存在していると感じられるのは、ひょっとしたら、この地を開拓した先人たちが遺してくれた文化や歴史という記憶が紡がれてきたことや、『写真の町宣言』にもあるように「自然と人」「人と文化」「人と人」のつながりや出会いを特に大切にしてきたことのおかげかもしれません。そのようにしてこれからも受け継いでいく東川町の「適疎なまちづくり」は、実態に即してしっかりとした「暮らしの土壌」を育むまちづくりだとも言えます。暮らしのすぐそばに豊かな自然環境が守られていること。地域のコミュニティがしっかりと活性していること。暮らしのなかでその時々に生じる地域課題もまたひとつひとつ丁寧に解決していくこと。もし足りないところがあれば、いろいろな人々とともに補い合っていくこと。そのどれもが、人が豊かに住み続けるためにとても大切な、基本的なことだからです。
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すべては、適疎な町を育てていくため
たとえば大雪旭岳源水、東川米、家具・クラフト、せんとぴゅあ、東川小学校、公営住宅の木造化、ひがしかわ株主制度、オフィシャルパートナー制度、東川町フォトフェスタ、写真甲子園、HIGASHIKAWAユースフェス――。町が取り組む様々な事業はすべて、衣・食・住・教育・文化・産業に至るまで決して漏らすことなく、これからも人が豊かに住み続けられるよう、ゆとりのある適疎な町を育てていくための取り組みであるべきだと私たちは考えています。
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