東川らしさ

 

#11 せんとぴゅあ

  
  
 
 

旧東川小学校の跡地を利活用して東川町の中心市街地でひときわ目を引く、“これまでの公共施設の定義では語れない”ユニークな施設「せんとぴゅあ」。

今回、地域活性化起業人として東川町に赴任し、「せんとぴゅあ」の運営に携わっている関水育子さん(文化交流課)に、お話をうかがいました。

   
 
  
 
  
 
  

――“これまでの公共施設の定義では語れない”にまず興味を惹かれてしまうのですが?

ひとことで言うと、「場としての機能は示されているものの、用途を限定していない」という点が、これまでの定義では語れない「新しい公共施設」だと言えます。町民のみなさんと一緒に「こんな使い方があるかな」などとお話しながら利用できる公共施設は、他にあまりないのではないでしょうか。

  
 
  
 
  
 
  

――もう少し具体的に?

東川小学校が移転したため、その跡地をどう利活用しようかということになりました。折しも東川町は人口が増えている最中。図書館が欲しい、文化を感じる場所が欲しいなどというような多様な町民ニーズが生まれていて、一方、町の政策課題としては、「写真の町」を起点に拡がったまちの文化性を背景に、東川町が有する文化資源を展示する場、交流人口を増やすための場、日本語学校への留学生を受け入れる場、なども必要でした。さらには、中心市街地にある地理的条件から防災拠点としても利活用すべきだよね、だったり。

「だったら複数の主体が関わりながら運営すればいい」ということで町として新しい取り組みを始めた結果、町も町民のみなさんも一緒に考えながら使っていくという“協働の場”が体現されていくことになりました。
 

  
 
 
  
 
  
 
  

――話が前後しますが、そもそも「せんとぴゅあ」とは?

「せんとぴゅあ」にはⅠとⅡがあります。Ⅰは旧東川小学校の校舎を改修した建物で、2つのギャラリー、コミュニティカフェ、ラウンジ、コミュニティホール、チャレンジキッチン、講堂、コリドーギャラリー、東川町立日本語学校、宿泊施設などの機能を持っています。Ⅱは新設の建物で、ほんの森、こどもコーナー、多目的室、体験室、セミナー室、ショップ、大雪山アーカイブス、東川写真コレクション、家具デザインアーカイブスなどの機能やコーナーを有しています。校庭の一部を利用して、北海道らしい広々とした芝生広場もあります。 

 
  
 
  
 
  

 

――ハードとしての特徴は?

「箱」というより「場」であることです。できる限り空間的に隠さない・閉ざさないようオープンにしてあり、みんなから見えるところでそれぞれがやりたいことをやりましょうということをコンセプトに、場としての可能性をひろげるためのデザイン設計がされています。

また、立地的には「まちの玄関」です。夜も遅くまで開館しているため、まちの中心部に夜も光が灯っている場があるという安心感もあり、居心地の良い雰囲気を醸成しています。「せんとぴゅあ」という存在そのものの意味も大きいと思います。
 

  

  
  
 
  
 
  
 
  

 

――ソフトとしての特徴は?

「NGがない」場を目指していることですね。それぞれのやりたいことが叶えられること。東川町に暮らしているなかで、自由を感じたり、それぞれが自分の居場所を見つけたり、新しい人・コトに出会ったり、なにかを楽しんだり発揮できたり。“わたしたちのリビング”が「せんとぴゅあ」です。

また「せんとぴゅあ」では利用者の制限もしておらず、町民のみなさんはもちろん、近隣の自治体にお住いの方やひがしかわ株主の方、道外の方でも利用いただけるという点でも「NGがない」ということになります。
 

  

 
 
  
 
 
 
   

――NGがないと……?

ルールがないからこそ、まわりの状況や環境を見ながら利用者が自分たちである程度考えてくれます。「ダメ」が示されていなくても、みなさん自然にせんとぴゅあらしさを考えながらふるまってもらえますね。町と利用者が対話しながら、ともに「せんとぴゅあ」をいい場にしていければと思います。 

 
  
 
 

 

 

――他には?

ふらっとお散歩で立ち寄ってくれる人も多いためここではまちの暮らしが垣間見えるし、みなさんのアイデアで新しい使い方の可能性がどんどん広がるし、きっとこれからも、時代や価値観の変化によって今はまだ想像できないようなことが、この場から生まれてくることでしょう。 

 
 

 

 

   
写真:畠田大詩
 
  
 
  

「写真の町」を掲げて文化によるまちづくりを40年もの長きに渡って続けてきた東川町の胆力や底力とでも言うのでしょうか。ソトから町にやってきた者としては、町民と行政が一体となってまちづくりを行う姿勢や町民のみなさんのまちへの関与度など、「この町ならできるかも」という期待や希望の循環が東川町にはあるように思います。

  
 
  
 
  
 
  

【関連サイト】(外部サイト)
せんとぴゅあ

  
  

関水育子さん

東川町文化交流課文化推進室マネージャー。2022年9月、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社からの地域活性化起業人として東川町に赴任、夫とお子さんのご家族3人で東川町に移住。

“育った場所はその人にとってのアイデンティティになります。10年後や20年後、子どもにとって東川町が「まちの記憶」のひとつとして、愛着を持って「自分の居場所がある」「このまちの人が好き」と思える場所になっていたら、嬉しいですね”