東川らしさ

 

#14 東川町公設塾「学び舎ひがしかわ」

   
 
 
 
 
  
   
 
 

東川町の唯一の高校である北海道立東川高等学校。その存続・発展のために、そしてなによりも、東川町に住む子供たちの未来のために、町としてなにができるだろうか――。

東川町では2022年から、子供たちの希望の進路を実現するための学習機会を提供するとともに、子供たち自身が自分の価値観を知り夢について考える機会を提供する、東川町公設塾「学び舎ひがしかわ」を運営しています。

その企画・運営に携わっている石本和宏さん(学校教育課)にお話をうかがいました。

   
 
  
 
 
 
 
 
   

マンツーマンの放課後授業として、高校生たちの学習や進路をサポート

   
 
 
  
 
 
  

――まず「学び舎ひがしかわ」に集まる子供たちについてお聞かせください。

この公設塾に集まるのは東川高校の生徒たちと、東川に住んでいて旭川市内など他の高校に通っている生徒たちです。現在(編集部注:2026年1月)登録者は61名で、そのうち、東川高校の生徒たちが22名です。毎年少しずつ増えているような状況です。

   
 
 
 
  

――「学び舎ひがしかわ」は全国各地でおこなわれている高校魅力化の一環という位置づけになるのでしょうか?

いえ。東川高校は道立の高等学校ですから、高校魅力化とは別の取組になります。東川高校とは様々な形で連携していますが、私たちが高校の授業やカリキュラムに携わることはありません。公設塾では放課後事業として、マンツーマンで高校生たちの学習や進路のサポートをしています。せんとぴゅあⅠの2階で日本語学校の教室を借りて、平日の16:00から21:00まで開けています。隔週ぐらいで土曜日も。

 
 
    
 
  
 
 
 
   

何か相談したいときに相談できる人と環境がここにある

  
 
 
      
 
  

――すぐお隣りの旭川市内には塾や予備校もたくさんあると思うのですが?

東川町の唯一の高校である東川高校は町にとってとても大切な教育機関です。そのため、町としてもしっかりサポートしていきたいということで、この公設塾は2022年からスタートしているものです。
そして、一般的な塾や予備校のように大学受験や就職試験に向けた対策の指導をするだけというよりもう少し間口が広く、高校生たちの日々の学習や進路のサポート役を全般的に担えるようにしています。

   
 
 
 
  

――なるほど。具体的には、どのようなことが「学び舎ひがしかわ」で行なわれていますか?

公設塾では特にカリキュラムが決まっているわけではありません。生徒たちは、それぞれの学校行事や部活動などの予定に合わせて、自分で考えて通塾スケジュールを決めています。もちろん、学校帰りにふらっと立ち寄っても構いません。何か相談したいときに相談できる人と環境がここにあるという感じです。

学習の目的や目標に関しても、生徒一人ひとりに合わせるという形でやっています。たとえば大学や専門学校への進学を目指して受験勉強を頑張っている生徒もいれば、進級するために補講的に学びたい生徒もいます。就職で社会に出る前にもう一度学び直しをしたいという生徒たちまで、学びのニーズはさまざまです。

  
 
  
 
 
 
 
 
    

ミライズ――進路やキャリアのサポートプログラム

  
 
 
    
 
    

――個別の学習指導以外にも「学び舎ひがしかわ」ならではのカリキュラムなどはありますか?

はい。進路やキャリアのサポートプログラムとして「ミライズ」を実施しています。簡単に言うと、グループワークや対話を通して、とにかく徹底的に自分の価値観や強みなどを深く掘り下げていこうというものです。

たとえば、89枚の様々な価値観が描かれたカードの中から取捨選択を繰り返し、最も大切に感じた価値観を7枚選ぶ「価値観トランプ」や、幼少期から経験してきたその時々の気持ちやモチベーションをグラフで表現するワークショップ、あるテーマについて合意形成を図るコンセンサスゲームなど、毎月1種類、事前に設定する2週間という期間内で、生徒の人数がそれなりに集まった時にその場で開催を決定するという柔軟なスタイルでやっています。こちらは事前にきちんと準備しておいて、実施そのものは「じゃあ、今からやろうか!」という感じです。生徒たちが公設塾にやってくる時間はまちまちなので。保護者の皆さんにも好評いただいています。

   
 
 
 
  

――日々の学習、受験勉強、進路やキャリアの相談に、“ならでは”の毎月の企画と、教える側のスキルや対応力がかなり求められそうですね。

講師は、私プラス地域の人プラス大学生です。私は常駐していて、他に時間講師のどなたかがいます。でも、講師によって受け持ちの科目や担当の生徒が決まっているわけではなく、生徒からの質問や疑問に答えられる人が答えていくスタイルです。生徒に教えるだけではなく、一緒に考えながら伴走するような感じです。

地域の時間講師はもともと、東川町の教育委員会の小中学生向けの放課後事業でも指導してくださっている方です。大学生の時間講師の中には、この公設塾の塾生だった卒業生たちもいて、後輩たちのために指導を手伝ってくれています。

  
 
 
 
 
 
    
 
 
 
  

公設塾ならではの取組。「学び舎ひがしかわ」で頑張った経験がいい思い出になれば

 
 
 
  
         
  
  

――塾生が「学び舎ひがしかわ」に戻ってきて後輩たちを指導するという循環がひろがっていくと素敵ですね。最後に、そんな「学び舎ひがしかわ」の“針路”を教えてください。

「学び舎ひがしかわ」は公設塾なので、公的な機関ならではの取組ができないかと考えてきました。それが進路をサポートするということでした。

普通の学習塾でもひとつのメニューとして進路サポートはあるのですが、テストの結果を見ながら進路の話をしても結局のところ最後は「勉強頑張れ」っていう結論になってしまう。将来の職業の話でも「それになりたいんだったら勉強しなさい」となってしまう。保護者の皆さんも学習塾や予備校に対して最終的には“成績”を求めているし、生徒たちの成績を上げるためには、進路サポートに費やす時間はどうしても限られてしまうというのが現実です。

だから、公設塾では、日々の勉強も教えますし受験に向けて一緒に頑張りもしますが、そもそも自分が何をやりたいのか分からないという生徒たちや、やりたいことが決まっていてもまだ視野を広く持てていない生徒たちのサポートもしたいなと思っています。実際、作業療法士になりたいという生徒がいて、塾生たちとグループワークしてみたら、病院で働くというだけでなく、プロスポーツチームのスタッフやスポーツジムのトレーナーとして働くという進路もあるということに初めて気付いた生徒もいます。そんなきっかけをこの公設塾でキャッチしてもらえたらと思いますね。

    
 
 
 
  

――そのような気付きを得て「学び舎ひがしかわ」を巣立っていく生徒たちには?

塾生たちの多くは大学や専門学校、就職などで地元に残らないと思うんです。でも、町外に出ていったとしても、彼らが社会人になった時に東川町となにかしらで関わってくれれば嬉しいですね。ビジネスで東川町の家具や農産物を展開してくれてもいいし、町外で東川町のいいところをアピールしてくれるのでもいい。そのために「学び舎ひがしかわ」で頑張ったっていう経験がいい思い出になればいいかなと願っています。

――石本さん、ありがとうございました。
 

  
 
 
 
   

東川町の「学び舎ひがしかわ」は公設塾ならではの方法で進路にアプローチしています。ここでは「学び舎ひがしかわ」の卒業生が後輩たちの進路やキャリアのサポートをするなどの好循環が生まれ、現役の塾生たちにとっても相談しやすい環境が整えられ始めています。東川高校に通う生徒や東川町に在住している高校生たちはぜひ一度「学び舎ひがしかわ」をのぞきに来てください。 

 
  
 
 

 

  
 
  

石本和宏さん
(東川町教育委員会学校教育課公設塾室長)

大学卒業後は20年間、民間の学習塾に勤務。2024年から東川町の公設塾「学び舎ひがしかわ」の企画・運営・指導に携わる。
“私も町民なので、来てくれている生徒たちってだいたい知り合いなんですよね。やっぱり「顔が見える」と言うか、本当に身近な人がこの公設塾に来て喜んでくれるっていうところが一番、私は楽しいですね