東川らしさ

#05 まいにちが、天然水

   
 
 
 
 
  
 
  
 
    
 
 

旭岳に神様がいたから

   
 
 

東川町に上水道はありません。町民全員が毎日、おいしい地下の天然水で暮らす、北海道で唯一の町です。
広大な大雪山系には毎年、膨大な量の雪が降ります。北海道で最も高い山である旭岳の噴火によって火山灰や溶岩が谷筋に堆積したことで、その下にある硬い地盤との間には保水力が生まれました。このような自然条件が重なり、今日もまた30~50年前に降った雪が同じ温度で日量6,000トンも湧出し続け、さらには30年分の水が地下に保水されているとも言われます。
また、その天然水は硬度が94で中硬水に分類されますが、ミネラルが豊富で欧州の硬水とは違ってとても飲みやすい上、成分的にはカルシウムとマグネシウムの比率が2:1と、ヒトの細胞とほぼ同じ比率であるため、カラダにやさしい水とされています。それほど恵まれた「おいしい水のまち」に東川町の人々は暮らしているのです。
それを、ある人はこう表現しました。

――旭岳に神様がいたからだ。水は神様からのおすそわけ。畏敬の念を払い、子どもにも孫にも、ずっとこの水を飲み続けてほしい。

    
 
 
 
  
  
   
 
  
 
 
 
  
 
  
 
 
 
    
 

時代の価値観の変化が「東川らしさ」につながった?

  

しかし、東川町は昔から「水推し」をしていたわけではありません。かつては、町外の人から「水道もないのか?」と揶揄された時代もあったそうです。しかし、町民は「だって、水に困っていないから(水道なんて要らない)」と答えるのが常でした。「上水道さえ整えない町」だったのが、いまでは唯一無二の「水のトップランナー」になったのです。時代の求める価値観が大きく変わったことによって、今の「東川らしさ」を構成する大きな要素のひとつである「まいにちが、天然水」の東川町が生まれたとも言えます。

     
 
 
 
 
 
 
 
   
 
 

町民のひそかな誇りに

   
 
 

自然条件や時代など、言わば幾つもの「たまたま」が重なった東川町の水ですが、実は町民にとって隠れた誇りになっています。北海道で唯一の町、飲み水もお風呂もすべて天然水の町、水がおいしいから農産物も料理もおいしい町、水のおかげで豊かな暮らしがおくれる町などなど。移住者や町外からの来訪者が口々に「東川町の水はおいしい」と言うことで、「この水が当たり前」だった東川町民の「東川町の水」に対する意識や価値観も変わっていったのかもしれません。

   
 
  
 
  
 
 
  
 
 
  
 
  
 
 
 
  
 
    

素晴らしい資源を守り続けるために事業を続ける

   
 
 

東川町の天然水「大雪旭岳源水」を製造している大雪水資源保全センターの濱本伸一郎さんによると、もともとペットボトルの製造事業に取り組んだきっかけは東日本大震災にあったそうです。豊富にある水資源を災害時の北海道の生活必需品として支援体制が構築できるくらい確保するという存在意義から始まったこの取り組みは今、「素晴らしい資源を守り続けるため、事業を継続することこそ我々のミッション」になっているとのこと。「おいしいこの水、恵まれたこの場所をなくしては駄目だ、ということをもっと広めたい」「地元の小学生が『へぇ~』と驚くほど、自分たちはとても良いところに住んでいるのだと認識してほしい」と濱本さんは語ります。

まいにちが、天然水。偶然から生まれた「東川町のおいしい水の暮らし」は、このように守り続ける努力とともに、東川らしい価値であり続けます。 

 
 

 

   
 
  
 
  
 
 

東川町のおいしい水のおいしい使い方

お酒が好きな方はぜひウィスキーの水割りを試してみてください。普通のウィスキーがぐっと高級なウィスキーに早変わりします。
思い切りふんだんに使って欲しいです。製氷、米研ぎ、炊飯、料理などなど、暮らしのあらゆるシーンで長く使えば使うほど、離れられなくなります。東川町のおいしい水には、その価値がありますから。
(大雪水資源保全センター・濱本伸一郎さん)